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中国現地法人における内部統制の実情

中国現地法人の内部統制構築における、決算・財務報告プロセス

決算・財務報告に係る業務プロセスのうち、全社的な観点で評価することが適切と考えられるものについては、全社的な内部統制に準じて全ての事業拠点について全社的な観点で評価することとなるが、それ以外の決算・財務報告プロセスについては、それ自体を固有の業務プロセスとして評価することとなる(内部統制実施基準Ⅱ3.(3)④ニb)。日本親会社においては、個別決算と連結決算の見地から決算・財務報告プロセスを整備・運用することになるが、中国現地法人では、子会社(日本親会社からみて孫会社)を有している事例が少ないため、主に個別決算の見地から決算・財務報告プロセスを整備・運用することになる。

(1)経理規程

上述の全社統制において整備・運用されるものと同じである。

(2)財務部門内での役割分担

全社統制において部門間の職務分掌規程が策定されるが、加えて財務部門内の各担当者の役割分担を定めておくことが望ましい。決算作業においては会計処理の網羅性が要点となるため、全ての作業をリストアップして各担当者に分担させるという書面を策定することが望まれる。

(3)決算作業スケジュール

中国においては月次の決算作業期間が概ね翌月10日までとなる。その理由は、増値税及び営業税の税務申告を毎月実施する必要があり、その期限が実務上、翌月10日までとされているためである(月初に法定祝日がある場合は期限が延長される)。税務申告書には月次の貸借対照表及び損益計算書を添付する必要があるので、12月末の年度決算においても翌月10日までに一通りの決算手続を完了する必要がある(但し、年度の確定税務申告は翌年5月が期限とされる)。

決算手続に際しては、財務部門内のみならず、倉庫部門や生産部門、営業部門等からデータ資料を入手する必要があり、これら資料のリストアップ並びに入手期限を明確にし、各部門に周知することが望まれる。加えて、財務部門内の役割分担に沿った決算作業スケジュールを設定することが望ましい。

(4)人員体制

一般的な決算・財務報告プロセスに係るチェックリストによると、財務部門担当者の適格性や能力が満たされていることが要求される。何をもって財務部門担当者の適格性とするかは議論のあるところであるが、中国においては企業の財務会計に従事する担当者には会計員証(中文:上岗证)という国家財政部管轄の資格が要求されている。会計員証には入門、初級、中級、高級といったランクがあり、それぞれ資格取得のための国家試験が開催されている。中国では、会計員証をもって財務部門担当者の適格性があるともいえる。なお、会計員証資格保持のためには、定期的に税務局等が開催する研修会に参画する必要もある。

(5)引当金等に係るRCM

棚卸資産減損引当金、固定資産減損引当金、貸倒引当金、賞与引当金、税効果会計の計算に関しては、リスク・コントロール・マトリクス(以下、RCMという)を中国現地法人においても策定し、計算過程とコントロール手続を明確にすることが要求される場合がある。

日本の会計基準による、将来キャッシュフローに基づく資産減損額の計算や、売掛金の回収可能性の判断、繰延税金資産の回収可能性の判断については、一般的な中国現地法人の会計担当者は理解していない場合が多い。この場合は日本本社の引当金等にかかるRCMを提示し、各項目の説明、中国現地法人に当てはめた場合のカスタマイズを期中の段階で行っておく必要がある。特に、将来キャッシュフローの算定や将来のタックス・プランニングについては、将来の経営計画が必要になる。経営計画は中国現地法人の経営層管轄であることが多く、会計担当者レベルでは関知していない企業が多い。引当金等のRCM策定に際しては、会計担当者のみならず、経営層も含めた協議が必要になる。

(6)決算整理仕訳

中国現地法人における主な決算整理仕訳としては、減価償却費、為替差損益、未払・未収計算、原価計算関連仕訳、賞与引当金、税金関連等である。日本国内会社と比較して、有価証券評価や退職給付引当金、デリバティブ会計といった複雑な項目が少ないため、比較的簡潔な決算整理仕訳となる。その場合でも、前期の決算整理項目と比較し、決算整理仕訳の洩れがないことを確認するための比較一覧表を作成することが望ましい。

(7)会計師事務所との協議

日本では外部監査の主体を、ほとんどの場合「監査法人」と呼称しているが、中国語では「会計師事務所」という名称となる。日本と同様に国家資格を有する公認会計士(中文:注册会计师)が中国現地法人に来訪し、帳簿の閲覧や棚卸資産の実査 等の監査手続を行い、財務諸表の適正性に関する意見表明を行う。 日本の外部監査と異なるところは、監査報告書添付の財務諸表を会計師事務所が作成することが挙げられる。そのため、会計士事務所が会社と協議せずに自らの判断で監査調整仕訳を財務諸表に反映させる、又は監査調整仕訳が会社の財務部門担当者に認識されていないといった問題点も発生することがある。

日系現地法人の場合、日本本社に対して決算予想や予算実績対比分析を決算前に報告することがある。会計士事務所が勝手に財務諸表数値の調整を行うことは、たとえ監査調整仕訳が正しいとしても避けたい事象である。対策として、会計士事務所とは会社に来訪している時点からコミュニケーションを図り、随時に意見交換できるよう、協議の機会を設けることが望ましい。

(5)引当金等に係るRCM

棚卸資産減損引当金、固定資産減損引当金、貸倒引当金、賞与引当金、税効果会計の計算に関しては、リスク・コントロール・マトリクス(以下、RCMという)を中国現地法人においても策定し、計算過程とコントロール手続を明確にすることが要求される場合がある。 日本の会計基準による、将来キャッシュフローに基づく資産減損額の計算や、売掛金の回収可能性の判断、繰延税金資産の回収可能性の判断については、一般的な中国現地法人の会計担当者は理解していない場合が多い。この場合は日本本社の引当金等にかかるRCMを提示し、各項目の説明、中国現地法人に当てはめた場合のカスタマイズを期中の段階で行っておく必要がある。特に、将来キャッシュフローの算定や将来のタックス・プランニングについては、将来の経営計画が必要になる。経営計画は中国現地法人の経営層管轄であることが多く、会計担当者レベルでは関知していない企業が多い。引当金等のRCM策定に際しては、会計担当者のみならず、経営層も含めた協議が必要になる。

(8)連結パッケージ入力マニュアル

中国現地法人における決算・財務報告プロセスの重要な論点として、連結パッケージへの入力が挙げられる。いかに中国現地法人において適正な財務諸表を作成したとしても、連結パッケージへの入力が誤っていれば、連結財務諸表も誤ってしまう。また、日本本社の経理部においては、昨今の決算早期化を背景として、全ての子会社の決算書を詳細にチェックする時間も労力も限られている。従って、中国現地法人において適正な連結パッケージへの入力及びチェックが完了した後、適時に日本親会社に送信することが期待される。

(8-1) 連結パッケージ
日本本社において、連結決算ソフトウェアを利用している場合、連結パッケージの内容は各子会社共通となる。また、日本の連結財務諸表勘定科目や注記事項、有価証券報告書作成に必要なデータ項目に基づいて連結パッケージ入力項目が設定されているため、特に中国現地法人側では一見どのようなデータが要求されているのかがわかりにくいことがある。例として、勘定科目で言えば退職給付引当金(中国では自己都合退職に際しても退職金を支給しないことが通常である)、税効果会計における永久差異と一時差異(税効果会計の知識がない担当者には理解されない)、セグメント情報(中国ではセグメント情報の注記は不要)、固定資産投資による増加生産能力等の項目である。 そのため、連結パッケージのみを中国現地法人に提示するのではなく、各項目の意味やデータ収集方法の説明を加えることが望ましい。

(8-2) 勘定科目対比表
連結パッケージ・マニュアルを策定する際に常に論点となるのが、日本の連結財務諸表上の勘定科目と、中国現地法人の個別財務諸表上勘定科目の紐付けである。日本及び中国双方の会計担当者が各勘定科目の意味について共通認識をもつためには、日中間の勘定科目対比表を作成することが有効である。以下、勘定科目対比表を作成する場合のポイントを説明する。 一点目は、中国では公表用財務諸表上の勘定科目(中文:一級科目)が法令通達で定められているということである(中国企業会計準則-応用指南)。従って、日本のように勘定科目を追加、削除できない。そのため、中国現地法人の個別財務諸表の勘定科目を日本の連結財務諸表勘定科目に変更するのではなく、組み替えるという作業が必要になる。 二点目に、日本と中国の損益計算書上の勘定科目体系が異なる。日本の連結損益計算書では、上から売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外損益、特別損益の順であるが、中国の損益計算書では、売上高、売上原価、主要業務税金及び附加、営業費用、管理費用、財務費用、営業外収支の順である。

このうち、主要業務税金及び附加とは、会社が負担する営業税や地方政府が徴収する教育費附加費用等であるが、日本の連結財務諸表では販売費及び一般管理費に組み替えられるものと思われる。 財務費用は受取・支払利息等の金融収支の他、為替差損益、銀行に支払った手数料から構成される。内容に応じて日本勘定科目の営業外損益又は一般管理費に組み替えることになる。 三点目に、中国の損益計算書上には特別損益項目がない。多額の貸倒損失や減損損失、過年度に計上した引当金の戻入益等については、管理費用の内訳として計上される。従って、これら項目が発生した場合は、連結パッケージ上の特別損益項目に計上していただく旨、中国現地法人の会計担当者に周知する必要がある。

四点目に、中国の損益計算書の特徴として、売上原価や営業費用、管理費用の内訳を記載する必要がない。そのため、日本の連結損益計算書上において、製造経費の内訳や販管費の内訳を記載、或いは注記する場合は、中国現地法人側では損益計算書ではなく、残高試算表に基づき連結パッケージに入力することになる。上述のとおり、中国では公表用財務諸表の勘定科目については法令通達で定められているが、その内訳明細科目については会計担当者の裁量に任せられている。そのため、明細内訳科目が取引先別や社内担当者の人名勘定となっていたり、また勘定科目名称のみでは内容が明確でない場合もある。この状況では日本本社の要求する連結パッケージ上の勘定科目に円滑に入力できない他、担当者が変わると入力項目の継続性が保てないという弊害が生じやすい。対応策としては、期中の段階で日本本社の連結財務諸表作成担当者が中国現地法人に赴き、明細科目の内容のヒアリング及び整理の指示を行った上で、勘定科目の対比表を作成しておく必要がある。ちなみに、良くある事例を挙げると、日本語の勘定科目で「法定福利費」と「福利厚生費」の区別がそのままでは中国人担当者には理解されない。中国語で「福利費」というと会社の忘年会費用や社員旅行費用を意味する。勘定科目対比表上に、日本語の「法定福利費」は中国語で言うところの「四金(社会保険料)」であり、「福利厚生費」は中国語の「福利費」であることを明確に整理する必要がある。

 


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