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中国現地法人における内部統制の実情

中国現地法人の内部統制構築における、実務上問題となる論点とその対策~その1

プロジェクト・チームの設置

中国現地法人においてプロジェクト・チームを設置し、内部統制の中心チームとする事例が多い。確かに、内部統制構築推進の責任部門として、また進捗管理部門としてのプロジェクト・チームの設置は有効と考えられる。
しかしながら、どのようなメンバーをプロジェクト・チームに設定するのかについては、J-SOXの知識や経験のない中国現地法人においては特に重要な論点となる。
考えられるケースとしては、下記のとおりである。

(1)少人数による内部統制プロジェクトの遂行

まず一つ目に、中国現地法人において、各部門から優秀な人材を選抜し、日本人経営層が中心となって内部統制構築をリードするというチーム構成が考えられる。確かにプロジェクト開始時点においては、内部統制に関する論点認識共有や議論の収束について少人数の方がスムーズに進む。しかしながら、この方法ではプロジェクトの後半、すなわち規程や業務フローに準拠した各部門担当者の業務の遂行、内部統制監査への対応時点において、まとまりがつかなくなるリスクが高い。
プロジェクト・メンバーのみによって策定された規程類や業務フローを、購買、倉庫、生産管理、営業といった各部門担当者に押し付けるような体制では、規程類の運用の段階において反発を招きやすい。特に中国においては、個人主義の傾向が日本よりも強いため、「会社が決めたルールよりも、自分が決めたルールの方が優れている(又は実行しやすい)」という考えの下、各担当者が独自の方法でオペレーションを行うことも頻発する。このような運用状況では、監査の場面において「会社が整備した規程類と実際の運用が異なる」ことが判明し、統制がとれていないという結論になりかねない。

(2)多人数による内部統制プロジェクトの遂行

二番目に、内部統制構築に必要な規程類や業務フローの作成業務を各部門に分散し、その後に統合するという方法が考えられる。この方法は、規程類を作成することのみならず、中国現地法人の各部門リーダーの養成や教育も意図していることが多い。
この方法の欠点としては、内部統制の理解や業務フロー等フォーマットの作成方法について統一性がなくなり、作成される資料が発散する。上述の「(1)少人数による内部統制プロジェクトの遂行」では、規程類の運用段階において実際の運用が発散するリスクがあるのに対して、この多人数により遂行する方法においては規程類や業務フロー等が作成される段階、すなわち整備の段階でフォーマットが発散するリスクが高い。
また、中国現地法人の場合、購買、倉庫、生産管理、営業といった各部門のリーダーといっても実際の帳票や証憑の作成業務は部下の担当者にまかせっきりで、実際の業務がどのようになされているかについて理解、把握されていないケースも多々ある。そのような場合、各部門リーダーは部下に業務フロー等の作成を丸投げし、さらにフォーマットの発散や、担当者間の連携が資料上に反映されにくくなる場合もある。
このような状況では、監査の場面において「規程類や業務フロー等に基づく有効な監査手続を設定しにくい」ことになり、ましてや日本親会社の監査法人への説明などできない状況になりがちである。

(3)コア・メンバーを中心とした多人数参画による内部統制プロジェクトの遂行

上述の(1)及び(2)の欠点を解消するための方法が、この3番目の方法である。まず、内部統制構築にあたり、各部門からコア・メンバーを選定するも、コア・メンバーのみによって規程類や業務フロー等を作成するのではなく、購買、倉庫、生産管理、営業といった各部門担当者にヒアリングや協議を行いながら、多人数の合意・納得の上で各種規程類を策定する。
この方法における役割分担は次のとおりである。

(a)コア・メンバー

内部統制構築プロジェクトの中心となり、また責任部門となる。必要となる規程類や業務フロー、業務記述書、リスク・コントロール・マトリクス(以下、RCMという)といった膨大な資料は、このコア・メンバーが中心となって作成する。また、下記(b)で示す各部門リーダー及び担当者と綿密なコミュニケーションをとり、各担当者が合意しうる規程類を策定するというホスピタリティが求められる。例えば、同じ購買部門内であっても、担当者により業務の実施方法が異なる場合、業務の内容に応じて丹念にヒアリングと協議を行う必要がある。さらに、日本親会社と中国現地法人現場担当者とのコミュニケーションを円滑にするためには、日本語と中国語の語学能力も求められる。

(b)各部門リーダー及び担当者

コア・メンバーが作成する規程類の作成に協力する。具体的には、現状業務の流れの説明、改善点に関する協議への参画、改善後業務フローのチェックと運用可能性にかかる合意を行う。各部門リーダーは、現場担当者の主たる業務を勘案しながら、コア・メンバーを中心とする内部統制構築プロジェクトに担当者を参画させなければならない。

(c)経営層

プロジェクトの遂行によって、内部牽制や承認証跡の不足、また部門間連携の不足といった問題点が発見されることがある。これらについては経営層が指導性を発揮し、追加人材の雇用、社内部門間の役割分担の整理、或いは取引先への要望交渉といった役割を担う必要がある。

この方法における成功のカギは、コア・メンバーがどれだけ労力を払い、ホスピタリティの精神を持って各部門担当者に接し、丹念なコミュニケーション合意しうる規程類を策定できるかにかかっている。コア・メンバーが努力し綿密な資料作成に労力を払えば、その状況を見ている現場担当者はコア・メンバーの提示する改善策案を受け入れる傾向がある。
しかし、この方法の欠点としては、このようなコア・メンバーになりうる人材が社内に乏しいということである。また、コア・メンバーに値する人材がいたとしても、その人物は生産や営業といった直接業務の重要なポジションに就いていることがほとんどであり、兼任で業務負荷の高い内部統制構築プロジェクトのコア・メンバーに就任することは不可能であるケースが多い。
この欠点に対応する方法としては、外部から該当する人材を招聘する方法と、中国現地法人の内部統制構築経験豊富なコンサルティング会社にコア・メンバーの役割を委託する方法が挙げられる。短期間集中で内部統制構築を遂行する場合は、監査法人への対応も含めて経験豊かなコンサルティング会社に委託する方法が推奨される。

 


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